ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「……ジークヴァルト様は、毎晩、このように遅くまでこの部屋の前にいらっしゃったのですか?」
「ああ。だが、ただの見回りだ」

 ただの見回りにしては、夜も遅すぎるような気がする。

「ジークヴァルト様。いくら王子殿下のご命令でも、そこまでご無理をなさらなくてもよろしいのでは……」
「問題ない」

 そっけなく言ってから、ジークヴァルトはじっとリーゼロッテを見つめた。

 ジークヴァルトは毎晩、リーゼロッテの客間に、守り石に施すように力を注いでいた。異形が中に入らないための手立てだったが、部屋が広いため、毎晩時間をかけて重ね掛けを続けていたのだ。

 早朝の見回りは、リーゼロッテが移動する廊下に集まってきた異形を、一通り浄化するために行っていたのだが、ジークヴァルトはそのことをリーゼロッテに言う必要はないと思っていた。どのみち浄化しても、やつらはいつの間にかまた集まってくる。

「石を見せてくれないか?」

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