ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「リーゼロッテ嬢が王城に来て、以前と変わったことを知りたいんだ。どんな些細なことでもいいから、聞かせてくれないか?」

 発言を許されたエラは、戸惑いながらもおずおずと口を開いた。

「リーゼロッテお嬢様が王城に上がられて、変わったことでございますか……?」

 言葉を選びつつも、エラは正直に話した。

「ダーミッシュ領のお屋敷ではお嬢様はよく転んだりなさいましたが、王城に来てからそのようなことはなくなりました。あと、食がずいぶんと細くおなりです。以前は常に食べていないとお力が出なくなっていたのですが、今は心配なくらいお食べになりません……」

「他には?」
「こちらに来たばかりのころはぐっすりとお眠りになっていたのですが、最近はなかなか寝付かれないご様子です。あと、お屋敷にいたときは、寝返りもうたずに静かにお眠りになられていたのですが、こちらでは夢見が悪いと……すこし寝苦しそうになさっています」

 リーゼロッテは領地の館では、身じろぎもせずそれこそ人形のように眠っていたが、客間のベッドではシーツが乱れるくらい寝返りを打っているので、リーゼロッテらしくないとエラはずっと心配していた。

 エラはそこで一回言葉を切ると、意を決したように王子殿下に訴えた。

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