ふたつ名の令嬢と龍の託宣 -龍の託宣1-
「恐れながら王子殿下。リーゼロッテお嬢様は、いつ頃お屋敷にお帰しいただけるのでしょうか。最近のお嬢様は、どこかご無理をなさっているようで、わたしはもう心配で心配で……」
「ダーミッシュ伯爵には期間は一カ月と申し渡してある。リーゼロッテ嬢には長くてあと半月はいてもらうことになる」

 その言葉に、エラは落胆の表情をした。しかし、王子にそれ以上抗議の言葉を吐けるはずもなかった。

 下がるように言い渡されて、エラは王子の執務室を後にした。リーゼロッテは、いつものように夕刻に公爵が客間まで連れて戻ることになっていた。後ろ髪を引かれる思いで、エラは護衛の騎士に送られていった。

「彼女も典型的な無知なる者だな……」

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