ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 異形の者を“浮かばれない死者の魂”と解釈したリーゼロッテは、どちらかというと『成仏してください』という日本でいう仏教的な概念でお祈りを繰り返していた。

 自分の“力”がどんなものなのか、今だ感じることができないリーゼロッテは、とりあえず念仏を唱えるように小鬼に語りかけていたのだ。

「それは力技すぎるだろう。まあ、浄化に抗うものは、力ずくが必要なこともあるが。リーゼロッテ嬢は、カイの言うことを真に受けなくていいよ」
「では、王子殿下。浄化とはいったいどういうものなのですか?」

 リーゼロッテのその問いに、ハインリヒは少し考え込んだ。

「どういうもの、か。あまり深く考えたことはなかったが……そうだな……わたしの場合、強いて言えば、正しい方向へ導く、という感じかな?」
「正しい方向、でございますか?」

 抽象的な言葉に、リーゼロッテは首をかしげた。

「ヴァルトはどうだ?」

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