ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「リーゼロッテ嬢、最近、眠りに関して困っていることはないかい?」

 ふいにハインリヒにそう聞かれて、リーゼロッテは意識を戻された。

「困っていること……」

 夢のことを言うべきか、リーゼロッテは迷った。

「些細なことでもいい。君の力を開放する糸口になるかもしれないんだ」

 ハインリヒにそう言われ、リーゼロッテは少しうつむいてその口を開いた。

「……最近、夢見が悪いのです」
「どんな夢を見るの?」
「はい。部屋の掃除ができなかったり、怪我をしている人の手当てができなかったり……夕べは、お腹を空かしている人たちがたくさんいるのに、オーブンに火がつかなくて、パンが焼けませんでした……」

 部屋に沈黙がおりる。リーゼロッテが次の言葉を発しようと口を開いたので、一同はそのまま何も言わずに待っていた。

 が、次の瞬間、男三人はぎょっと目を見開いた。何かを言いかけていたリーゼロッテの瞳から、ぽろぽろと大粒の涙があふれだしたのだ。

「ええ? 夢の話だよね?」

 カイが腰を浮かして焦ったように言った。

「はい、夢の、話、です。ですが、みんな、あんなにお腹を空かせているのに、わたくし、わたくし、何もできなくて……」

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