ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 やせ細った人々。材料はここにあるのに、何も食べさせてあげられない。リーゼロッテの緑色の瞳からはさらに涙があふれだした。

「お屋敷にいた頃も夢はよく見たのです。でも、ちゃんと、片付けもお料理も手当てもできて、たいへんだけど、とてもやりがいのある楽しい夢ばかりだったのです。お城に来てから見る夢は、どれも本当に哀しくて……」

 リーゼロッテの小さな口がへの字に曲がってふるふると震えた。見ている方がいたたまれなくなるような泣き方だった。

「ほら、ジークヴァルト様、婚約者なんですから、ハンカチのひとつでも差し出してあげてくださいよ」

 カイに促されて、ジークヴァルトは懐から出した白いハンカチをリーゼロッテに手渡した。

 ありがとうございますと小さく言って、リーゼロッテはそれを受け取った。ジークヴァルトの大きな手は、そのままリーゼロッテの頭の上に乗せられた。

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