ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ポチ、どうして……」
「だから、ポチってなんなのさ。……ホント、リーゼロッテ嬢って、すごいんだかすごくないんだか」

 あきれたようにカイは、「涙で浄化するなんて、星読みの王女もびっくりだ」と続けた。

 ブラオエルシュタインには『孤独な龍と星読みの王女』という童話があるのだが――

 その言葉にほんの少し首をかしげたジークヴァルトが、不意にリーゼロッテの頬に残る涙を人差し指ですくい上げた。その涙をそのままぺろりと舐める。

「しょっぱいな」
「ななななななにをなさるのですか」

 頬を手で押さえ、真っ赤になりながらリーゼロッテは後退った。

「ヴァルト、お前な。青龍にでもなったつもりか」

 ハインリヒは頭が痛そうに顔を手で押さえた。

 童話の話の中で、王女の涙を龍が舐めるシーンがあるのだが、ジークヴァルトはそれを模したのだろう。子供なら一度ならずとも読み聞かせられる有名な童話なので、この国に住むものは誰でも知っている話であった。

「確かめただけだろう」
「だからと言って、舐めるか普通」

 リーゼロッテの力もイレギュラーだが、最近のリーゼロッテに対するジークヴァルトの行動もイレギュラーすぎる。ハインリヒは、ふたりのこの先が不安で仕方なくなってきた。

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