ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 少しずつジークヴァルトの人となりが分かってきたような気がしていたが、この突拍子のなさは、やはり自分では手に負えそうもない。リーゼロッテはそう思うと、じり、と後退さろうとした。

「なら、泣くのはまた今度でいい。今は眠ってもらおうか、ダーミッシュ嬢」

 ジークヴァルトは魔王の笑みを浮かべて、リーゼロッテの手を取った。話の展開についていけない。

「おっしゃっている意味がわかりませんわ」

 じりじりと迫られて、リーゼロッテは助けを求めるように周りを見渡した。あぐらをかいたままそこに浮かんでいるジークハルトと目が合う。

「ジークハルト様」

 リーゼロッテが乞う様に言うと、『リーゼロッテが眠るなら、オレはどっか行ってるけど』と、ジークハルトは助け舟どころか、そんなことを言ってきた。

「いてくださらないと困ります! ハルト様は守護者なのですから、ジークヴァルト様のおそばを離れてはいけませんわ。それに、そもそもわたくし、眠りませんし、人前でなど、寝られません!」
「夕べはオレの前で寝ただろう」
「あれは、ヴァルト様の手が気持ち良すぎて!」

 リーゼロッテは咄嗟にそう返してしまい、我に返って顔を真っ赤にした。

「と、とにかく、なぜ、今眠らなくてはならないのか、全くもって意味が分かりませんわ!ですからわたくし、絶対に眠りません!」
「いいから眠れ。オレの手でまた気持ちよくしてやる」

 手をわきわきして近づくジークヴァルトに、リーゼロッテは恥ずかしさのあまり思わず叫んだ。

「変な言い方、なさらないでくださいませ! 頭をなでていただけではありませんか!」

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