ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ジークヴァルト様、玉座の間はそちらでは……」

 止めようとしたカイの視線が、ジークヴァルトが切り開いた廊下の先を向く。そこにはハインリヒ王子とキュプカー隊長、そしてなぜかアンネマリーがいた。とその時、アンネマリーの背後の異形が、うねるように動くのが目に入った。

 ひとつひとつは大した力を持たない異形が、何か意思を持ったかのように一つに合わさり、渦を巻いて立ち上がる。天井高く上がった異形の先端は、そのまま下降しアンネマリーの背中を強く押し出した。

 アンネマリーの体が傾き、倒れていこうとする先に、振り返ったハインリヒがいた。

「やばい」

 カイは思うより早く、その場を駆け出した。

< 238 / 678 >

この作品をシェア

pagetop