ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「そんなに王太子妃になりたいのかしら。……わたくしは絶対にごめんだわ」

 王城の一角で、不敬にあたる発言をアンネマリーは吐き捨てるように言った。

「ねえ、王子殿下のお噂をリーゼは知っている? なんでも殿下は大の女嫌いで、近づく令嬢たちをそれは冷たくあしらっているそうよ」

 控えの間で侍女たちの噂話を耳にしたが、こういったことは話半分に聞くものである。リーゼロッテは、「まあ」とだけ言って、自分の言及はあえてさけた。

「それどころか、王子殿下に大怪我を負わされたご令嬢もいたらしいわ。本来なら責任をとって妃に迎え入れなきゃならないところなのに、完全無視よ、無視」

 まるで見知った出来事のように、アンネマリーは憤慨している。

「結局そのご令嬢は、ふたまわりも年の離れた方の後妻に入ったらしいわ」

 リーゼロッテはやはり、「まあ」とだけ口にする。その適当な返しに気を悪くすることもなく、アンネマリーは小声で話を続けた。

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