ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「殿下は、実は、男色家だってお噂もあるわ。王太子殿下付きの騎士が、常におそばに張りついて、殿下を狙う令嬢たちから、身を挺して殿下をお守りしているのよ」

(黒王子の次はBLですか……)

 適当に相槌をうちつつ、そんなことよりのどが渇いたなと、リーゼロッテは全く関係のないことを思っていた。

 今日は北国の春先にしては少し暑いくらいの陽気になりそうだ。正午に近づき、陽が高くなるにつれて、じんわりと気温が上がってきていた。

 しかし、自分がカップを持つ → 紅茶をこぼす → もしくはカップが割れる → もしくはその両方がおきる → 誰かが確実に怪我をする → ダーミッシュの家名に傷が付く……というような想像したくもない未来が予想できてしまうため、のどが渇いてもお腹がすいても、絶対に何も手をつけてはならない。それこそクッキーひとつであったとしても。

 クッキーひとつで何が起きるのだと言われるかもしれない。確実に、お皿の一枚くらいは割れるだろう。

 なぜだ。

 それは、リーゼロッテが聞きたいくらいである。

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