ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「その分イジィが手をかけているだろう?」

 やさしい手つきでディートリヒはイジドーラの頬をなでる。

「ハインリヒはセレスティーヌ様の大事なお子ですもの」

 前王妃であるセレスティーヌは気高く美しい女性だった。ハインリヒは性別は違えど、その彼女にそっくりな容姿をしていた。

 だが、ハインリヒはセレスティーヌと違ってやさしすぎる。姉姫たちの方がよっぽどセレスティーヌの気質を受け継いでいるとイジドーラは感じていた。

 もっともセレスティーヌが亡くなったのは、ハインリヒが二歳のときであったから、それも仕方のないことかもしれない。

「王はハインリヒに冷たすぎるのですわ」

 もう一度イジドーラは言った。

「すべては龍の思し召しだ」

 そう言うと、ディートリヒは王妃の白い手を取り、その指先に口づけた。

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