ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ハインリヒ様」
キュプカー隊長が廊下の向こうから駆け寄ってきた。
「王城全体に何やら不穏な空気を感じます」
キュプカーには異形の姿を視たり祓う力はなく、純粋に王太子の護衛として職務についていた。しかし勘が鋭い男で、見えていなくともその気配は敏感に感じることはできる。
精神力の強い者に、異形たちは近づこうとはしない。無知なる者とはまた違った意味で、キュプカーは異形に対して耐性を持ち合わせていた。
「ああ、キュプカーも感じていると思うが、あり得ない数の異形が騒いでいる。そちらの対応はジークヴァルトが指揮をとる。キュプカーは、王城に残っている者がいたら城外へと避難させてくれ」
「御意に」
そう言ってキュプカーがその場を後にしようとしたそのとき、先の廊下から誰かがこちらに向かって歩いてくるのをハインリヒは感じた。感じただけなのは、異形の者たちで廊下の先が見えなかったからだ。
「待て、キュプカー」
そう制止すると、ハインリヒは右手を握り力を込める。その手をふるって廊下の先にためた力を放った。異形が一筋払われて、その先に人影が見えた。その場にそぐわないゆったりした足取りで現れたのは、戸惑うような表情のアンネマリーだった。
キュプカー隊長が廊下の向こうから駆け寄ってきた。
「王城全体に何やら不穏な空気を感じます」
キュプカーには異形の姿を視たり祓う力はなく、純粋に王太子の護衛として職務についていた。しかし勘が鋭い男で、見えていなくともその気配は敏感に感じることはできる。
精神力の強い者に、異形たちは近づこうとはしない。無知なる者とはまた違った意味で、キュプカーは異形に対して耐性を持ち合わせていた。
「ああ、キュプカーも感じていると思うが、あり得ない数の異形が騒いでいる。そちらの対応はジークヴァルトが指揮をとる。キュプカーは、王城に残っている者がいたら城外へと避難させてくれ」
「御意に」
そう言ってキュプカーがその場を後にしようとしたそのとき、先の廊下から誰かがこちらに向かって歩いてくるのをハインリヒは感じた。感じただけなのは、異形の者たちで廊下の先が見えなかったからだ。
「待て、キュプカー」
そう制止すると、ハインリヒは右手を握り力を込める。その手をふるって廊下の先にためた力を放った。異形が一筋払われて、その先に人影が見えた。その場にそぐわないゆったりした足取りで現れたのは、戸惑うような表情のアンネマリーだった。