ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ハインリヒ様、リーゼロッテは大丈夫でしょうか?」

 アンネマリーは咄嗟にその背中に問いかけた。

「ああ、彼女はジークヴァルトといるはずだ」

 振り向いてそう答えた瞬間、アンネマリーの背後にいた異形がざわりと形を変えた。

「え?」

 アンネマリーは誰かに背中を押されたような感覚を覚え、後ろを振り返ろうとした。そのまま廊下に倒れこみそうになる。その先にいたのはハインリヒだった。

 ハインリヒは異形に囲まれ、その場を一歩も動くことができなかった。

 避けることも、アンネマリーを受け止めることもできずに、彼女の柔らかそうな肢体が自分に近づいてくるその光景を、スローモーションのように感じてただ立ち尽くしていた。

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