ふたつ名の令嬢と龍の託宣
『あは、ジークヴァルトがオレに話しかけるのなんて、何年振りだろ?』

「茶化すな」と、ジークヴァルトが言葉を続けようとしたとき、ジークハルトがリーゼロッテを振り返った。

『ねえ、リーゼロッテ。今の状況をどうにかしたい? 君にならできるけど、やってみる?』

 突然の言葉に、リーゼロッテはエメラルドのような目を見開いた。それを、ジークハルトは逆立ちのような格好で覗き込むように見つめた。

「わたくし、やります」と、リーゼロッテはかすれた小さな声で言った。このまま異形の叫びを聞き続けるのはつらすぎる。

『そっか、わかった。でも、それをするにはヴァルトの力が邪魔なんだよね』

 ジークハルトがリーゼロッテの胸元を指さすと、首にかけられたペンダントの石がふわりと浮いた。

「どういうことだ」

 ジークヴァルトが苛立ったように言った。

『おもしろいから黙って見てたけど。でも、もっとおもしろくなりそうだし、ね』

 だから今回は特別だよ、と言って下に降りてきたジークハルトは、今度はリーゼロッテを斜め下からのぞき込んだ。

< 255 / 678 >

この作品をシェア

pagetop