ふたつ名の令嬢と龍の託宣
『とにかく、その守護者の力さえ引き出せれば、あの異形たちはまるっと浄化できるよ。だけど今はヴァルトの守り石がその守護者の力の発現を邪魔してる。要するに、リーゼロッテが石を外して眠りにつけば万事解決ってわけだ』
「それが本当だとして、ダーミッシュ嬢の守護者が異形を浄化できる保証はどこにある」

 ジークヴァルトが眉間にしわを寄せた。なにしろ前代未聞の異形の数だ。いくら守護者の力だろうと、力を扱えないリーゼロッテにそれができるのか。

『信用ないな~。ヴァルトだってあの夜、リーゼロッテの力を目の当たりにしたろう?』

 ふわふわ浮きながらジークハルトは大げさに肩をすくめた。

『それに、アレ、みーんなリーゼロッテに引き寄せられて集まってきてるんだよ。限界までたまったその力が魅力的なんだろうね』

 ジークハルトがリーゼロッテの胸元、龍のあざがある場所を指さしながら言った。

「ええ? わたくしが原因なのですか?」
『さっきうっかり小鬼を浄化しちゃったでしょ? あれが引き金で、こうなった、と』

 リーゼロッテは顔を真っ青にした。

『言い換えると、今、城に集まってる異形たちは、リーゼロッテにしか祓えない。どうする? やる? やらない?』

 ジークハルトが問うと、リーゼロッテは寝台から降りて、ふらつく体で立ち上がった。

「わたくし、やります」

 決意のこもったリーゼロッテのその言葉に、ジークヴァルトは知らず目を(すが)めた。

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