ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
「何をやっているんだ、ヴァルトのやつは?」

 苛立つようにハインリヒは言った。リーゼロッテを連れてジークヴァルトが隣室に行ってから、小一時間は経とうとしている。

「リーゼロッテ嬢を休ませているんじゃ? 間取りからして、あっちは寝室ですよね?」

 そう言われて、そこまで思い至っていなかったハインリヒはぎょっとした顔をした。婚約者同士とはいえ、男女が寝室に二人きりというのはいかがなものか。

「いや、さすがにこの状況で、そんなことは……」

 ハインリヒの自分を納得させようとするつぶやきに、カイが深刻そうな声音でぽつりと言った。

「オレ、昔、イグナーツ様に聞いたことがあるんですけど……託宣の相手同士が肌を合わせると、すごく、気持ちがいいんだそうです」

 その言葉に、ハインリヒは思わず腰を浮かせた。

「ヴァルトだぞ!? そんなことが」
「あり得なくはないですよ。だってあんなジークヴァルト様、今まで見たことありますか?」

 カイの言葉に、ハインリヒは言葉を失った。

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