ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 確かに、笑みを浮かべるジークヴァルトなど天変地異が起こらない限りあり得ないと思っていたが、最近のジークヴァルトはリーゼロッテ相手に頻繁にその口元を綻ばせていた。たとえそれが、悪魔のような笑みであったとしても。

 しかも、今までどんな美女に言い寄られても眉間にシワしかよせなかったジークヴァルトが、自ら女性に触れるなど、いまだに我が目を疑ってしまう。そんなジークヴァルトの様子がおかしくて、リーゼロッテには悪いと思いつつ、ハインリヒはついつい笑ってしまっていたのだが。

「いや、だが、しかし、さすがにこの状況で」
「何言ってるんですか! こんな状況だからこそ燃え上がるんです!」

 バンっとテーブルを叩きながら、カイが声高に叫んだ。妙に実感のこもったカイの台詞に、ハインリヒの顔が赤くなる。

「ば、馬鹿なことを言うな」

(扉をたたいて確かめるか? いや、いきなり女性の寝室に行くなど……。アンネマリーか侍女に頼む? いやいや、万が一コトが行われたとしたら一体どうするのだ!)

 高速でハインリヒの頭がそんなことを考えていると、寝室の扉がいきなり開いた。

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