ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ハインリヒ、玉座の間に向かうぞ」

 ジークヴァルトがリーゼロッテを連れてそのまま居間を出ていこうとする。ハインリヒは思わずふたりの着衣を確認してしまった。

「なんだー、残念。ジークヴァルト様も案外ヘタレですね」

 カイがつまらなそうに言うと、からかわれたことに気づいたハインリヒは「おい」とカイを一睨みした。カイは嗤いながら肩をすくめてみせた。

「ヴァルト様、わたくしエラに薬をもらってきます」
「ああ」

 リーゼロッテはエラの部屋に行くと、しばらくして小さな紙に包まれた白い粉を手に戻ってきた。それは、お茶会から帰るときに使う予定だった眠り薬だった。

「一体どういうことだ?」

 ハインリヒは困惑したようにジークヴァルトを見やった。

「ダーミッシュ嬢が異形を浄化する。玉座の間までハインリヒもついてきてくれ」
「カイ様はこのままここに残って、アンネマリーとエラを守っていただけますか?」

 リーゼロッテにそう言われたカイは、「ええ?それはいいけど、いきなり何でそうなるの?」とこちらも困惑した声で言った。

「話はあとだ」
 そう言って、ジークヴァルトはリーゼロッテの前に跪いた。

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