ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ジークハルトの言うことを鵜呑みにしていいものか、ジークヴァルトは心の中で迷っていた。

 だが、自身もリーゼロッテの力の片鱗を垣間見た。現状では埒が明かない以上、やってみるしかないのはわかっている。今までの自分だったら、ためらいもしなかっただろう。可能性が僅かでもあるのなら、なぜ試してみないのだと。

 しかし、今、リーゼロッテを包む自分の力を解くことに、躊躇している自分がいた。無防備な体を、異形の前に晒すくらいなら、ずっと自分で囲っておきたい。

 そう思っている自分に戸惑いを覚えた。

「ジークヴァルト」

 ハインリヒに声をけられ、ジークヴァルトははっと我に返る。

「ハインリヒ、お前は俺の背後に回れ。玉座の間は王の結界で護られているようだが、何が起きるかわからない」

 務めて冷静に、ジークヴァルトは言った。

「彼女はどうしたのだ?」

 ハインリヒは、ジークヴァルトと背中合わせに座ると、少し振り向いてリーゼロッテを心配そうに見やった。

「ダーミッシュ嬢の力は、眠りと共に解放される。今まではオレの力と反発しあって内にこもっていたらしい」

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