ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 そう言うと、ジークヴァルトは覚悟を決め、リーゼロッテを包む己の力を振りほどいた。

 その瞬間、周辺に集まる異形たちが大きく反応した。玉座の間が激しく揺れる。

 リーゼロッテはジークヴァルトの腕の中で、身じろぎもせず眠っていた。人形のように白い顔で、呼吸をしているのか思わず確かめたくなるほどに、静謐(せいひつ)に眠りについている。

 ほどなくして、その小さな体から陽炎(かげろう)のような緑のゆらめきが立ち上がった。

 ジークヴァルトとハインリヒは、その押しつぶされそうな重い“気”に、ぐっと顔をしかめた。

「なんなのだ、これは」
 ハインリヒがうめくように言った。

 仄明るい緑の力がリーゼロッテを中心に広がり、玉座の間を満たしていく。部屋中の空気がピンと張りつめて、息苦しいほどだった。

(これが、ラウエンシュタインの力なのか――)


 その光の円は、玉座の間の外へも広がっていき、群がり叫び続ける異形たちをも静かに飲み込んでいった。

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