ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
 びりびりとリーゼロッテにあてがわれた客間の壁が振動している。

 その時カイは、遠くから響いていた異形たちの咆哮が何か大きな力に飲まれ、やわらかく溶けていくのを感じていた。その力は、徐々にこの部屋にも近づいてきているようだ。どれだけ大きな力だと言うのだろうか。

 アンネマリーがエラの部屋から出てきた。

 先ほどまで三人でお茶を飲んでいたが、エラは異形の気にやられて気分が悪くなったようで部屋で休ませることにした。さすがの無知なる者でも、この数の異形には耐えられないということか。

「エラは今眠りましたわ」

 アンネマリーは少し疲れた顔で静かに言った。彼女の方は影響が少ないようだ。無知なる者にも力の差があるのかと、カイは興味深げに思った。

「アンネマリー嬢は気分が悪くなったりしてない?」
「はい、わたくしは問題ありませんわ」

 部屋に沈黙が訪れる。

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