ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ジークヴァルトの名に、リーゼロッテの体が一瞬こわばる。それに気づかず、ブルネットの令嬢は話を続けた。

「お話し中、割り込んでごめんなさいね。わたくし、ヤスミン・キュプカーと申します。王太子妃の地位にご興味がないお仲間とお見受けして、思わずお声をかけてしまったの」

 ヤスミンと名乗った令嬢は、リーゼロッテの隣の椅子に座りなおした。

「キュプカー様と言えば、侯爵家でいらっしゃいましたわよね。わたくしはアンネマリー。父はクラッセン侯爵ですわ。こちらはリーゼロッテ様。ダーミッシュ伯爵のご長女よ」
「まあ、あなたがダーミッシュ伯の! お会いできて光栄ですわ」

 ヘーゼルの瞳をキラリと光らせて、おとなしそうな見た目にそぐわない素早い動作で、ヤスミンはリーゼロッテの手を取った。

「わたくしこそ、ヤスミン様とお知り合いになれて、とても光栄ですわ」

 心の動揺をおさえつつ、リーゼロッテはその口元にやわらかな微笑みをのせた。

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