ふたつ名の令嬢と龍の託宣
そのときアンネマリーの瞳から、一粒の涙がこぼれ落ちた。
「あたたかい……」
そう言うと、アンネマリーはあたりを見回した。アンネマリーの涙がカイの肩にすべり落ち、カイは突如、世界を取り戻した。
水を得た魚のように動かなかった体の自由が戻ってくる。思い切り息を吸い込むと、ふわりとアンネマリーのいい匂いがした。
――このままアンネマリーの全てを奪いたい。
突然カイはそんな衝動に駆られた。自分ならばいとも簡単にそれができてしまうだろう。
ふいにあの可哀そうな王子の顔がよぎった。欲する者の手には届かず、そうでない者はたやすくそれを手に入れる。
託宣は呪いだ――
そう言ったのは誰だったろうか。
カイはハインリヒに特別な感情は抱いていなかった。イジドーラの大切な人間の、大切にしたかったもの。
ただそれだけだった。
「あたたかい……」
そう言うと、アンネマリーはあたりを見回した。アンネマリーの涙がカイの肩にすべり落ち、カイは突如、世界を取り戻した。
水を得た魚のように動かなかった体の自由が戻ってくる。思い切り息を吸い込むと、ふわりとアンネマリーのいい匂いがした。
――このままアンネマリーの全てを奪いたい。
突然カイはそんな衝動に駆られた。自分ならばいとも簡単にそれができてしまうだろう。
ふいにあの可哀そうな王子の顔がよぎった。欲する者の手には届かず、そうでない者はたやすくそれを手に入れる。
託宣は呪いだ――
そう言ったのは誰だったろうか。
カイはハインリヒに特別な感情は抱いていなかった。イジドーラの大切な人間の、大切にしたかったもの。
ただそれだけだった。