ふたつ名の令嬢と龍の託宣
『この国も、もう終いかもしれんな。このままでは、じきに、嬢の娘子も……』
『…………』
『……わしもそろそろ潮時じゃな。楽しい時を過ごしすぎて、帰り時を逃してしもうた』

 大公のその言葉を聞くと『じゃあお別れだ、大公』と言って、ジークハルトはふわりと浮き上がった。

『守護者殿も、引き際を見誤るでないぞ?』
『肝に命じるよ』

 ジークハルトは肩をすくめてから、そのまま上を目指そうとした。

『ああ。リーゼロッテといったか。嬢の娘子に、ありがとうと伝えてくれまいか』

 大公の言葉に頷いて『わかった、必ず伝えとく』と返すと、ジークハルトは再び上空へと登っていった。

 それを見送った大公は、小脇に抱えた兜のベンテールをかしゃりと開けた。

『なんとも眩しくあたたかな光よ』

 そこまで迫っている力に目を細め、大公は幸せそうに笑いながら緑の光にのまれていった。

< 276 / 678 >

この作品をシェア

pagetop