ふたつ名の令嬢と龍の託宣
◇
わたしは階段を昇っていた。先の見えない長い長い階段だ。階段は天空に伸びていて、その先にそびえたつ大きな扉に向かっていた。
昇っても昇っても、扉に遠く近づくことはできない。ふと気づくと、わたしは両手に水の入った入れ物をかかえ、背中には大きな荷物を背負っていた。落としてはいけない。上にはこれを必要とする人が待っているのだから。
わたしは階段を昇り続けた。足が上がらなくなってもう休みたいと思っても。腕がしびれて荷物を置いていってしまいたくなっても。わたしは階段を昇り続けた。そこに、待っている人がいるから。
一向に近づかない扉を見るのはやめた。自分の足元だけを見て、水を一滴もこぼさないよう、一歩一歩階段を昇った。
ふと見ると、目の前に扉があった。荷物を足元に置き、扉を押し開いた。そして、そこにいた人たちに荷物と水を手渡した。
荷物の中には食べ物と、薬や包帯が入っていた。中身はあっと言う間に空になった。
わたしは気づくと水と荷物を持ち、階段を見上げていた。階段の上にある扉は遥か彼方だ。また一歩一歩階段を昇り始める。
水をこぼしてはいけない。そこに、待っている人がいるのだから。わたしは力の限り、荷物を運び、階段を昇り続けた。
足が棒のように感じられて、がくがくと震える。手がしびれて、手に持った水を取り落としそうになる。
ふと、背中の荷物が軽くなった。後ろを振り向くと、誰かが荷物を押して、一緒に階段を昇っていた。その人は、さっきはありがとう、と笑顔で言った。
みると、隣で同じように水を運んでいる人がいた。その人は、ひとり、またひとりと増えていく。力のない子供たちは、バケツリレーのように、列を作って小さい入れ物で水を手渡していた。
みんなで運び続けた。扉はいつの間にか近くにあった。扉の中に、みんなで水と荷物を運んでいった。
中の人はみんなうれしそうに水を飲みほした。傷の手当てを受けて、安堵の表情をする人がいる。食べ物を受けとって、子供たちはうれしそうにはにかんだ。
運んでいる人も、水を飲む人も、みんな笑顔になった。水をもらってから満足すると、残りを誰かに手渡す人もいた。自ら荷物を運びに戻る人もいた。
階段は果てしなく、求める人はまだまだ後を絶たないけれど、わたしは足が棒になって腕の感覚がなくなっても、ただひたすら荷物を持って、階段を昇り続けた――
わたしは階段を昇っていた。先の見えない長い長い階段だ。階段は天空に伸びていて、その先にそびえたつ大きな扉に向かっていた。
昇っても昇っても、扉に遠く近づくことはできない。ふと気づくと、わたしは両手に水の入った入れ物をかかえ、背中には大きな荷物を背負っていた。落としてはいけない。上にはこれを必要とする人が待っているのだから。
わたしは階段を昇り続けた。足が上がらなくなってもう休みたいと思っても。腕がしびれて荷物を置いていってしまいたくなっても。わたしは階段を昇り続けた。そこに、待っている人がいるから。
一向に近づかない扉を見るのはやめた。自分の足元だけを見て、水を一滴もこぼさないよう、一歩一歩階段を昇った。
ふと見ると、目の前に扉があった。荷物を足元に置き、扉を押し開いた。そして、そこにいた人たちに荷物と水を手渡した。
荷物の中には食べ物と、薬や包帯が入っていた。中身はあっと言う間に空になった。
わたしは気づくと水と荷物を持ち、階段を見上げていた。階段の上にある扉は遥か彼方だ。また一歩一歩階段を昇り始める。
水をこぼしてはいけない。そこに、待っている人がいるのだから。わたしは力の限り、荷物を運び、階段を昇り続けた。
足が棒のように感じられて、がくがくと震える。手がしびれて、手に持った水を取り落としそうになる。
ふと、背中の荷物が軽くなった。後ろを振り向くと、誰かが荷物を押して、一緒に階段を昇っていた。その人は、さっきはありがとう、と笑顔で言った。
みると、隣で同じように水を運んでいる人がいた。その人は、ひとり、またひとりと増えていく。力のない子供たちは、バケツリレーのように、列を作って小さい入れ物で水を手渡していた。
みんなで運び続けた。扉はいつの間にか近くにあった。扉の中に、みんなで水と荷物を運んでいった。
中の人はみんなうれしそうに水を飲みほした。傷の手当てを受けて、安堵の表情をする人がいる。食べ物を受けとって、子供たちはうれしそうにはにかんだ。
運んでいる人も、水を飲む人も、みんな笑顔になった。水をもらってから満足すると、残りを誰かに手渡す人もいた。自ら荷物を運びに戻る人もいた。
階段は果てしなく、求める人はまだまだ後を絶たないけれど、わたしは足が棒になって腕の感覚がなくなっても、ただひたすら荷物を持って、階段を昇り続けた――