ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ジークヴァルトに手を取られ、リーゼロッテの鼓動がどきりと跳ねた。

「ここにオレの力を集める。……感じるか?」

 そう言われ、リーゼロッテは握りこまれた自分の手のひらの中を意識する。そこには、いつも守り石に感じるあたたかいものが感じられた。

(ヴァルト様だ――)

 青い光を感じてリーゼロッテはこくりと頷いた。

「ゆっくり凝縮してから解放する。お前はただ感じていろ」

 リーゼロッテは力を抜いて手のひらのあたたかさに意識を集中した。

 ジークヴァルトの言うように、あたたかなそれはその密度を増し、きゅうっと小さくなっていく。凝縮された青い塊は、今にも破裂しそうに張り詰めた。

 それが一気に解放される。コルクの栓を開けるような感覚だと、リーゼロッテは思った。

「感じたか?」

 ジークヴァルトの問いに、リーゼロッテは小さく「はい」と頷いた。

「今度はお前の力だ」

 そう言って、ジークヴァルトはリーゼロッテの小さな手を包む自分のそれを、リーゼロッテの胸の前まで運んだ。

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