ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 リーゼロッテの力を慎重に引き出してみる。針穴のような隙間から、リーゼロッテの力が集まってくる。ジークヴァルトはそれをゆっくりと集めていった。

 自分の力よりずっと時間がかかる。ちらりとリーゼロッテの様子を伺うが、苦しそうな様子は見られなかった。そのままゆっくりとリーゼロッテの手のひらの中にためていく。

「お前の力だ。わかるか?」
「はい、わかります」

 リーゼロッテは目を瞑ったままひそやかに答えた。

 ジークヴァルトは、そのまま力を凝縮していく。うんと少ない量だったが、凝縮された力は緑の綺麗な色を放っていた。

「いくぞ」

 ジークヴァルトはそれを一気に解放した。ぽんとした感覚をリーゼロッテは覚えた。

(今度はマーブルチョコの筒を開けたときみたい)

 そんなことを思ってリーゼロッテは心の中でくすりと笑った。

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