ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「感じたか?」

 ふいに耳のもとで言われ、再び心臓が跳ねる。

「は、はい。感じました」

 そう返事をすると、自分でもやってみるよう促される。

 手のひらに意識を集中した。ジークヴァルトの導きの中、ほんの少しだけ力が集まったのを感じる。

「そのままそれを圧縮してみろ」

 そう言われて手のひらに意識を傾けるが、うまくいかない。そうこうしているうちに、手のひらの中のそれはふわりと広がり、大気に溶けてなくなった。

「ああ」

 リーゼロッテがそう声を上げると、ジークヴァルトは包んでいた手のひらを解放した。

「今日は終わりだ」

「でも」と斜め後ろを振り返ったリーゼロッテは、思いのほか近いジークヴァルトの顔に狼狽した。あやうく唇がふれそうな距離だった。

 ボッとリーゼロッテの顔が赤くなり、なぜか組んだ手のひらからポンと力が飛び出した。

 びっくりして両手を開いて見やるが、何も変わったところはない。意識を集中してみても、おもしろいくらい何事も起きなかった。

「無理はするな。倒れるぞ」

 そう言ってジークヴァルトは、リーゼロッテの口にクッキーをひとかけら押し込んだ。

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