ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 そんなふたりの様子を、ジークハルトはにこにこしながら見守っていた。あぐらをかいて宙に浮いたまま、楽しそうにゆらゆら体を揺らしている。

 意味ありげなその視線に「なんだ?」とジークヴァルトが不機嫌そうに言った。

『いや、涙ぐましい努力だなと思って』

 ジークハルトの小馬鹿にしたような言い方に、リーゼロッテがぐっと言葉を詰まらせた。

「では、ハルト様は、他によい手立てがあるとお思いですか?」

 涙目で訴える。

『リーゼロッテはもうすぐ十五歳になるよね?』

 いきなりそう問われ、リーゼロッテは戸惑い気味に頷いた。

「はい、来月には」
『十五を迎えればきっと大概のことは解決するよ。ヴァルトの力が拒絶されるのもなくなると思うし』

 ジークハルトの言葉に、ジークヴァルトが怪訝そうに問うた。

「なぜそう思う?」
『だってリーゼロッテを守っているのはマルグリットの力だし』

 ジークハルトは至極当たり前のことのように言った。

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