ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「アンネマリー様は、社交界デビューの準備のためにご実家にお帰りになられるのですよ」

 たしなめるようにピッパに言ったのは、先ほどの女官だっだ。

「ここで準備すればいいじゃない。わたくし、アンネマリーにまだまだ聞きたいことがいっぱいあるわ」
「そのようなわけには参りません。アンネマリー様のご滞在は初めからそう決められております」

 王女のわがままには慣れている様子で、女官はぴしゃりと言った。

「ピッパ様、わたくしがお(いとま)するまでまだ時間はありますわ。それまでにいっぱいお話しいたしましょう?」

 アンネマリーがやさしく言うと、ピッパ王女は大輪の花がほころぶような笑顔をみせた。

「ええ! テレーズ姉様や異国の話をいっぱいしてちょうだい! アンネマリーの話はどんな物語よりも面白いもの!」

 そのまま王女は女官に連れられて部屋を後にする。

 名残惜しそうに王女は振り返ると、「アンネマリーはまた城にきてくれるわよね?」と懇願するように言った。

「お許しをいただけるのであれば、よろこんで参上いたしますわ」

 アンネマリーはぶしつけにならない程度に王妃に目線を向けた。ピッパも期待に満ちた目を王妃に向ける。

「ピッパはアンネマリーがお気に入りね。王におねだりするといいわ」

 王妃のその言葉に、ピッパ王女は顔をほころばせ、意気揚々と去っていった。

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