ふたつ名の令嬢と龍の託宣
(太陽みたいな方ね、王女殿下は)

 リーゼロッテがそんなことを思っていると、王妃の視線がまた自分に向けられていることに身をこわばらせた。

「リーゼロッテと言ったわね」

 王妃の問いにリーゼロッテは瞳を伏せたまま、「はい、王妃殿下」と硬い声で答えた。

「顔を上げてこちらを見なさい」

 命令とあらばそうするしかない。リーゼロッテは伏せていた目を上げ、イジドーラ王妃の顔を真っ直ぐに見上げた。

 イジドーラ王妃は、切れ長の瞳に蠱惑的な唇をした美女だった。薄い水色の瞳に大人の色香がただよい、アッシュブロンドの髪が彼女の謎めいた雰囲気をよりいっそう強くしていた。口もとにあるほくろがなんとも艶めかしい。

 そんな美女に真正面から見つめられ、同性であるリーゼロッテも思わず顔を赤らめてしまった。

「……あまり似てないのね」

 そう言うと、王妃は興味をなくしたようにリーゼロッテから視線を外した。

「戻るわ」

 お付きの女官にそう言うと、イジドーラ王妃は来た時と同じようにあっという間に去っていった。

 ピッパ王女が太陽ならば、イジドーラ王妃は月のようだ。冷たく冴えわたる刺さりそうな三日月は、そんな彼女のイメージにぴったりだと、リーゼロッテはそんなことを考えていた。

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