ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 テレーズ王女を取り巻く環境は、子供にありのままに話せるような内容ではなかった。それだけ、隣国の王室は悪意と邪念が渦巻く世界だった。

 王には父から報告がいっているはずだが、アンネマリーはテレーズのそばにいたからこそ、王妃に伝えなければいけないとそう思った。

 アンネマリーは王妃の反応をみながら言葉を紡いでいたが、どうも王妃は、話の内容よりもアンネマリー自身を観察しているように感じられた。

 試されている。

 その言葉がしっくりいくような空気をアンネマリーは否応なしに感じとっていた。王妃が何を試しているのかは、アンネマリーにはさっぱりわからなかったのだが。

(合格ならば、また王城に呼ばれることもあるかしら?)

 不合格なら、ハインリヒとふたりきりで会うことも二度とはないだろう。

 アンネマリーがふいに苦しそうな表情になる。リーゼロッテは気遣うようにアンネマリーの肩に手を添えた。

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