ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「何かあったの? アンネマリー」
「わたくし、ハインリヒ様が……」
そこまで言ったアンネマリーは、小さく首を振ってから言い直した。
「いいえ。わたくし、ハインリヒ様にお預かり物をしているの。最近なかなかお会いできなくて、どうやってお返ししようかと思っていて」
そう言って、アンネマリーは懐中時計を大事そうに取り出した。
「まあ、そうなのね。わたくしも最近は王子殿下にはお目見えできていないわ」
その時計はリーゼロッテにも見覚えがあった。王子の実母であるセレスティーヌの形見の懐中時計だったはずだ。
「アンネマリーは王子殿下とよくお会いしていたの?」
リーゼロッテの問いにアンネマリーは、「幾度かお話をさせていただいたわ」と顔を赤らめた。
「王子殿下はそれを、アンネマリーに持っていてほしいのではないかしら?」
最近の王子の反応をみて、リーゼロッテは思ったことをそのまま口にした。
王太子の応接室で、話の流れでアンネマリーが話題になると、王子殿下の顔がわかりやすいくらいほころんでいた。
それに、アンネマリーが手にしているのは、王子が肌身離さず持っていた形見の懐中時計だ。そんな大事なものを、どうでもいい人間に預けるとは到底思えない。
「わたくし、ハインリヒ様が……」
そこまで言ったアンネマリーは、小さく首を振ってから言い直した。
「いいえ。わたくし、ハインリヒ様にお預かり物をしているの。最近なかなかお会いできなくて、どうやってお返ししようかと思っていて」
そう言って、アンネマリーは懐中時計を大事そうに取り出した。
「まあ、そうなのね。わたくしも最近は王子殿下にはお目見えできていないわ」
その時計はリーゼロッテにも見覚えがあった。王子の実母であるセレスティーヌの形見の懐中時計だったはずだ。
「アンネマリーは王子殿下とよくお会いしていたの?」
リーゼロッテの問いにアンネマリーは、「幾度かお話をさせていただいたわ」と顔を赤らめた。
「王子殿下はそれを、アンネマリーに持っていてほしいのではないかしら?」
最近の王子の反応をみて、リーゼロッテは思ったことをそのまま口にした。
王太子の応接室で、話の流れでアンネマリーが話題になると、王子殿下の顔がわかりやすいくらいほころんでいた。
それに、アンネマリーが手にしているのは、王子が肌身離さず持っていた形見の懐中時計だ。そんな大事なものを、どうでもいい人間に預けるとは到底思えない。