ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
 王妃の離宮を出ると、入口でキュプカー隊長が待っていた。

「ダーミッシュ嬢、今日はわたしが護衛の任を仰せつかった。部屋までお送りしよう」
「まあ、お手数をおかけして申し訳ありませんわ」

 リーゼロッテがそう返すと、「婚約者殿でなくて申し訳ないが」と、キュプカーは(はしばみ)色の瞳をきらりと光らせて人懐っこい笑みを浮かべた。

「とんでもありませんわ。ジークヴァルト様はいじわるでいらっしゃるから、わたくしちっとも歩けませんの」

 キュプカーにはあの抱っこ輸送を何度も見られている。開き直ってリーゼロッテは拗ねたように言った。

「ご安心を、ダーミッシュ嬢。フーゲンベルク公爵閣下には、抱き上げての移動は絶対にしないよう仰せつかっております」

 礼を取りながら言うキュプカーに、リーゼロッテは思わず吹き出してしまった。キュプカーは職務上はジークヴァルトの上官だったが、爵位的にはジークヴァルトの方が上位の貴族だ。

「いやだわ、わたくしったら。こんな風にはしたなく笑ってしまうなんて」

 キュプカーと話していると、領地の義父を思い出してとても安心する。リーゼロッテは心からの笑顔を見せた。

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