ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 気を取りなおしてキュプカーに手を引かれて王城の廊下を進むと、途中でジークヴァルトに遭遇した。

 キュプカーからジークヴァルトに引き渡されたリーゼロッテは、警戒するようにジークヴァルトから、じりと距離を取った。

「ヴァルト様、わたくし今日は、自分の足で部屋まで戻りますわよ」

 上目づかいでそう言うと、ジークヴァルトは無表情のまま手を差し伸べてくる。
 リーゼロッテが黙ったまま動かないでいると、ジークヴァルトは感情のこもらない声で言った。

「ではお嬢様、お手をどうぞ」

 予想外の言葉に、リーゼロッテは呆然とした。呆然としながらも差し出された手を取ると、ジークヴァルトはリーゼロッテを紳士のようにエスコートして、ゆっくりと廊下を歩きだした。

(これがケサランパサラン効果なの!?)

 ディートリヒ王おそるべし、などと不敬極まりないことを考えながら、リーゼロッテは客間の部屋までゆっくりと自分の足で歩いて帰った。

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