ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 客間の扉の前でリーゼロッテが手を放そうとすると、ジークヴァルトは何か言いたげにその手に力を入れた。

「ジークヴァルト様?」

 一向に手を離そうとしないジークヴァルトをいぶかしんで、リーゼロッテはこてんと首をかしげる。

「あれを返してくれないか?」

 突然そう言われ、「あれ、でございますか?」とリーゼロッテは聞き返した。

「この前、貸したあれだ」

 客間の入口の前でそんな問答をしていると、いつの間にか扉を開けてリーゼロッテを迎え出ていたエラが、おずおずと会話に入ってきた。

「恐れながら、公爵様がおっしゃっているのは、こちらのハンカチの事でしょうか?」

 エラの手には、きれいに折りたたまれた白いハンカチが乗せられていた。先日、リーゼロッテが泣いたときにジークヴァルトが差し出してくれたハンカチだった。

「ああ、それだ」

 ジークヴァルトはそのままエラからハンカチをうけとると、大事そうにそれを懐にしまった。

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