ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「明日、朝また迎えに来る」

 そう言って、ジークヴァルトはリーゼロッテを部屋の中へと促した。

「はい、お待ちしております」とリーゼロッテが言うと、ジークヴァルトはそのまま扉を閉めようとした。

「あの、ジークヴァルト様」

 王子のことが気になって、思わず呼び止めてしまう。振り返ったジークヴァルトは、無言でリーゼロッテの言葉を待っていた。

「いえ、おやすみなさいませ、ヴァルト様」

 リーゼロッテが逡巡したのちにそう言うと、ジークヴァルトは「ああ」と言ってリーゼロッテの頭にポンと手を置いた。

 手を引く時に、ジークヴァルトの小指が一房の髪をさらっていく。リーゼロッテの髪がさらりとその指の間をこぼれていった。

 ジークヴァルトはそれ以上何も言わずに、そのままぱたりと扉を閉めた。

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