ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「はあぁ」

 リーゼロッテの後ろで控えていたエラが、緊張を解いたように大げさに息をついた。

「どうしたの、エラ?」

 リーゼロッテのその問いに、エラは少し困ったように「公爵閣下の御前ではどうも緊張してしまって」と答えた。

「最近のリーゼロッテお嬢様は、公爵様と平然と話されていて、このエラは驚きでいっぱいです」

 エラは言葉とは裏腹にうれしそうな口調で言った。

 領地でのジークヴァルトへの塩対応を思えば、今のリーゼロッテの様子に驚いても仕方がないだろう。

「実際にお会いしてお話をしたら、とてもやさしい方だとわかったのよ」

 異形のせいでジークヴァルトが恐ろしかったとは、さすがにエラにも打ち明けられず、リーゼロッテはあたりさわりのないことでごまかしておいた。

「ええ、ええ、そうでございましょうとも。公爵様はリーゼロッテ様が贈られた刺繍の入りのハンカチを、あんなに大事そうに使ってくださっていますもの」

 リーゼロッテはその言葉に、信じられないものを見るようにエラを見つめた。

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