ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 エメラルドのような瞳でカイを真っ直ぐ見つめ、リーゼロッテは淑女の笑みを向けた。カイの紅茶はまろやかな舌触りで、いつでも香しくとてもおいしかった。

 疲れている時、うれしいとき、落ち込んでいる時。

 カイはリーゼロッテの体調に合わせて、ミルクや砂糖が多めだったり、寛げるようにハーブを入れたり、時にはスパイスの効いた刺激的なものまで、いろんな紅茶を淹れてくれた。気遣ってもらっているのだと思うと、リーゼロッテはその気持ちにとても癒された。

 カイにしてみれば、お茶を淹れることは相手の懐に入るための手段の一つに過ぎなかったが、それなりに美味しい紅茶の淹れ方を研究してきた身としては、そう言われて悪い気はしなかった。

「いつでもまた淹れてあげるよ」

 ふたりはにっこりと微笑みあった。

(結局はオレも、この令嬢に毒気を抜かれているのかもな)

 微笑みつつ、カイは内心で苦笑した。

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