ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 カイは意地の悪い表情になると、リーゼロッテに聞こえないように、そっとジークヴァルトに耳打ちした。

「大丈夫、イケますよ、ジークヴァルト様。いいですか? 女性はガッと抱きしめてグッと口づければイチコロです。はじめは驚いて嫌がるかもしれませんが、憎からず思っている相手には、そのまま攻めれば蕩けてふにゃふにゃになりますから」

 カイの言葉に一瞬動きが止まったジークヴァルトは、そのあと無言でリーゼロッテに視線を移した。リーゼロッテは無邪気に小鬼の浄化を続けている。

(やばい、マジでおもしろすぎる)

 カイは笑いだしそうなのを必死でこらえ、こんな面白い光景が見られるのは、今日で最後かと思うと心から残念に思った。

「オレ、この後行かなきゃならないところがありますから」

 王妃に定期報告をする日だということを思い出して、カイは部屋から出ていこうとした。振り返り、「リーゼロッテ嬢、気をつけてね?」とにっこり言ってから扉を開けた。

 リーゼロッテは明日の道中を心配してくれたのだと思い、「ありがとうございます」と返したが、カイは意味深にジークヴァルトをみやり、再びリーゼロッテに笑みを残して出て行ってしまった。

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