ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 リーゼロッテはカイを見送ると、再び小鬼たちに向き直った。

「最後まで、あきらめませんわ」

 そう言うと、そのふっくらした口元の前で祈るようにゆるくこぶしを握り、その両手の中に力を集め始めた。

(あきらめたらそこで試合終了なのよ。安西先生もそう言ってたじゃない)

 某バスケ漫画を思い出し、リーゼロッテはその手の中に意識を集中した。

 ジークヴァルトはその姿を立ったままじっと見つめていた。

 手のひらの中の緑の光を、大事そうに集めていくリーゼロッテの口が何事かつぶやいている。そのうっすらと開かれた唇は、あまりにも無防備に見えた。

 ジークヴァルトは無意識に、その隙だらけのリーゼロッテに手を伸ばしていた。

 その手がリーゼロッテに届こうとしたとき、テーブルの上のティーカップがカタカタとふるえだし、次の瞬間ガチャンと大きな音をたてた。

 驚いてそちらをみやると、カップが真っ二つに割れている。残っていた紅茶がソーサーにこぼれてテーブルにまで溢れだしていた。

 咄嗟にジークヴァルトはリーゼロッテの頭を抱え込み、自分の胸に引き寄せた。いきなりのことにリーゼロッテは呆然と割れたカップを見つめることしかできない。

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