ふたつ名の令嬢と龍の託宣
実際に彼に会うのは、今日でニ度目である。一度目は十年以上前のこと。リーゼロッテがいくつの時だったろうか。
顔はもう憶えていない。というより、リーゼロッテは彼の顔を見たことがない。いや、正確に言うと、初めて会った時に、彼の顔を見ることができなかったのだ。
そして今も、リーゼロッテは彼の、ジークヴァルトの顔を窺い知ることはできなかった。なぜなら、あの日と同じように、ジークヴァルトの顔から胸にかけて、黒いモヤが覆っているのだ。
婚約者だと紹介され対面したあの時も、ジークヴァルトは、真っ黒いそれをその身に纏わせていた。あまりの怖さに、小さかったリーゼロッテは、泣き出してしまったほどだ。
そして、今日、彼から感じる禍々しいまでの黒霧に、記憶の中のあの日以上の恐怖を感じた。リーゼロッテから血の気がすうっと失われていく。
(にげなくちゃ。みつかって、けされてしまうまえに)
理由の分からない恐怖にさいなまれて、リーゼロッテは知らず一歩、後退った。
顔はもう憶えていない。というより、リーゼロッテは彼の顔を見たことがない。いや、正確に言うと、初めて会った時に、彼の顔を見ることができなかったのだ。
そして今も、リーゼロッテは彼の、ジークヴァルトの顔を窺い知ることはできなかった。なぜなら、あの日と同じように、ジークヴァルトの顔から胸にかけて、黒いモヤが覆っているのだ。
婚約者だと紹介され対面したあの時も、ジークヴァルトは、真っ黒いそれをその身に纏わせていた。あまりの怖さに、小さかったリーゼロッテは、泣き出してしまったほどだ。
そして、今日、彼から感じる禍々しいまでの黒霧に、記憶の中のあの日以上の恐怖を感じた。リーゼロッテから血の気がすうっと失われていく。
(にげなくちゃ。みつかって、けされてしまうまえに)
理由の分からない恐怖にさいなまれて、リーゼロッテは知らず一歩、後退った。