ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「クラッセン侯爵令嬢、わたしの目の前に、二度とその姿を見せないでくれ」

 目を合わすことなく、ハインリヒの冷たく平坦な声が響く。

「え……?」

 アンネマリーの顔から色が無くなる。何を言われたのか、理解ができなかった。

 歩がひとりでに前に出て、アンネマリーはハインリヒに近づいた。気づくと、その表情の消された蒼白な顔に、そっと手を伸ばしていた。

「触れるなっ!」

 鋭く大きな声に、アンネマリーはびくりと身を震わせた。

「ハイン……リヒ、様……?」

 信じられないものを見つめるように、アンネマリーがハインリヒの顔を凝視する。伸ばそうとした指先が宙をさまよい、殿下を抱く腕に力が入った。

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