ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
 夕刻に王妃に謁見しに離宮を訪れたカイは、顔を見た瞬間、イジドーラ王妃の様子がいつもと違うことに気がついた。

「イジドーラ様? 何かあったんですか?」

 王妃はカイを一瞥したあと、たたんだ扇を口元に置いたまま、不満そうな表情で目をそらした。

「王と喧嘩でもしたんですか? ……そんな拗ねた顔をして」

 カイがそう問いかけると、イジドーラは横目でカイを見やった。

「フーゲンベルクの眠り姫が呼び戻されたのよ」

 そう言って、納得がいかないという風に、王妃は薄い水色の瞳をすがめてみせた。

「フーゲンベルクの眠り姫……? アデライーデ様、ですか?」

 カイはここ数年会っていない、隻眼(せきがん)の美しい令嬢を思い浮かべる。

「……バルバナス様がよく許しましたね」

 イジドーラが何を不満に思っているか分かっていながら、カイは別のことを口にした。

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