ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ふいに手を引かれ、彼女から引き離される。

 気づくとリーゼロッテは、今度はジークヴァルトの腕の中にいた。こちらはごつごつしていて、あまり居心地はよくない。リーゼロッテは、ちょっぴり残念に思った。

「もう、男が焼きもちを焼くなんてみっともない」
「ダーミッシュ嬢が困っている」
「あきれた、ホントに甲斐性がない男ね! ごめんなさいね、不肖の弟で」

 女性騎士に顔を覗き込まれ、リーゼロッテは挨拶もしていないことに気がついた。

 上位貴族の許しなしに、こちらから名乗るのはルール違反だったが、これだけ気安く話かけられているなら大丈夫だろう。そう思ったリーゼロッテは、ジークヴァルトの腕をやんわりと解くと、優雅なしぐさで淑女の礼を取った。

「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。リーゼロッテと申します、お義姉さま」

 礼を取った姿勢のまま、しばしの沈黙が訪れた。なかなか返答がないことにリーゼロッテは戸惑いつつも、そのままじっと待ってみる。

(もしかして姉呼ばわりは早まったかしら……)

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