ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
「おお、わたしの可愛いリーゼ」

 屋敷に着くと、義父母のフーゴとクリスタが出迎えてくれた。使用人たち一同も、屋敷中の者たちがエントランスホールで並んで待っていた。リーゼロッテがいなかった一カ月は、屋敷中が暗く沈んでいるかのようだったのだ。

「お義父様、お義母様、ただいま帰りました」

 優雅に礼をとったリーゼロッテに、一同は顔をほころばせた。

 フーゴとクリスタに交互に抱擁され、リーゼロッテは後ろに控えるアデライーデをフーゴに紹介した。

「お義父様、こちらの方はアデライーデ様、ジークヴァルト様のお姉様でいらっしゃいますわ」
「お初にお目にかかります、フーゴ・ダーミッシュでございます。勅命の件は連絡を受けております。任とはいえ、道中、娘の護衛をしてくださり感謝いたします」

 伯爵がアデライーデに礼を取ると、アデライーデはやんわりとそれを制した。

「しばらくは娘の警護を続けていただけるとか。こちらに滞在中、ご要望がありましたら何なりと申し付けください」
「わたしは王の勅命でリーゼロッテ嬢の護衛を任された身。そのような気遣いは不要に願います」

 騎士の礼を取ると、「勅命の件で伯爵と少し話がしたいのですが、よろしいでしょうか?」とアデライーデは続けた。

「もちろんです。ダニエル、アデライーデ様をわたしの執務室にお通ししてくれ」

 ダニエルは腰を折って礼を取り、アデライーデを案内していった。

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