ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 どちらにせよ、弟の不手際と言わざるを得ない。

 わかっていて放置していた父と母にも思うところはあったが、託宣を終えた者たちは、龍の意思でその口をはさめないのだと聞いたことがあった。

 アデライーデは、未来の義妹を一目で気に入った。ジークヴァルトにくれてやるには、もったいなさすぎる。

 母の苦労を間近で見てきたがゆえに、これからリーゼロッテにふりかかるであろう災厄の数々を想像すると、アデライーデはでき得る限り力になってやりたいと、そう思っていた。

 龍の託宣にまつわる忌まわしい出来事を、もう二度と引き起こしたくはない。自分も含め、ジークヴァルトも、父も母も、十分すぎるほどつらい目に合ってきた。

 当事者たちは放り出すことも叶わないのだ。そう思うと、自分の身に起きたことは過ぎたこととして飲み込むしかない。

 アデライーデはいつも通り自分にそう言い聞かせ、その隻眼をそっと伏せた。

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