ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 そんな時、部屋の扉がノックされる。エラが扉を開けると、そこにはシンプルなドレスを着たアデライーデが立っていた。

 騎士服姿も格好いいが、出かけるとき以外は楽な服装でいてほしいとリーゼロッテが懇願したのだ。アデライーデは苦笑いしたが、それでリーゼロッテの緊張がほぐれるならと、リーゼロッテのかわいいお願いを快く受け入れてくれた。

「アデライーデ様、および立てして申し訳ありません」

 リーゼロッテが室内に案内すると、「いいえ、かわいい妹の頼みですもの。いつでも喜んでくるわ」アデライーデはうれしそうに笑った。

「もうお姉様とは呼んでくれないの?」

 すねたように言われ、リーゼロッテは顔を赤らめた。

「アデライーデお姉様」

 はにかむように言われ、アデライーデはきゅんとしてリーゼロッテをその胸に抱きしめた。

(ヴァルトの気持ちが分かるような気がするわ)

 あの女嫌いの弟が、やたらとリーゼロッテには触れていた。それこそ必要以上と思えるほどに。

 そのことを特別意識していないリーゼロッテを見て、全く男として見られていない弟に少しばかり同情したのだが。

 あの甲斐性なしの朴念仁にはちょうどいいと思い、次の託宣が降りるまで、当面は邪魔してやろうとアデライーデはほくそ笑んだ。

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