ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ジークヴァルトには今朝一番で手紙を送っている。今、ジークヴァルトは公爵家と王城を行ったり来たりしているらしく、とりあえず、公爵家に届けるよう、家令のダニエルに手紙をたくしてあった。

 公爵領は王城からほど近く、ダーミッシュ領から早駆けの馬で四時間程度のところにあるので、夜にジークヴァルトが手紙を確認したとして、返事は早くても明日の午後以降だろう。

(ホウレンソウ、報告・連絡・相談は基本よね)

 ペンダントの守り石がすぐにくすむことはなさそうだが、今までの思いもよらない事態があったことを考えると、早めに対処するの方がよいと考えたのだ。

 しかし、リーゼロッテは目の前のアデライーデの不穏な空気に、「ヴァルト様にはお手紙を出したのですが」と慌てて付け加えた。

「わたしは石に力を込めるのは苦手なのよね。……それがないと困ることは何?」

 アデライーデの問いかけに、リーゼロッテは正直に答えた。

「ヴァルト様の守り石がないと、小鬼が見えませんし、追い払うこともままなりません。わたくし、自分の力をまだうまく扱えなくて……」

 恥ずかしそうに言うリーゼロッテに、アデライーデは笑顔で返した。

「リーゼロッテの今までの環境を思えば、それも仕方ないわ。わたしもそれなりに力を扱えるまで、子供の頃は苦労したもの」

 その言葉にリーゼロッテは意外そうな顔をした。

「アデライーデ様もですか?」

「ええ」とほほ笑む未来の姉に、リーゼロッテは親近感を覚えた。

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